「廃盤になったお気に入りのジュエリーを、もう一度手に入れたい」「亡くなった家族の形見の指輪を、家族全員分作りたい」——こうした声に応える技術として、いま3Dスキャンがジュエリー業界で大きな注目を集めています。

従来、ジュエリーの複製には現物から手作業でゴム型を取る方法が一般的でした。しかし、ゴム型は加熱・加圧を伴うため、宝石付きの製品やデリケートなアンティークジュエリーには使えないケースがありました。3Dスキャンなら、現物に一切触れることなく、ミクロン単位の精度でデジタルデータ化が可能。金型がなくても、データさえあればいつでも復刻・複製ができる時代になっています。

この記事では、当社が導入している産業用3Dスキャナー「Artec Micro II」の特徴から、実際のスキャン〜鋳造の流れ、活用事例までを詳しくご紹介します。

3Dスキャンとは?

3Dスキャンとは、現物品にレーザーや構造化光(パターン光)を照射し、その反射データをもとに物体の表面形状を立体データ(3Dデータ)に変換する技術です。取得したデータはSTLやOBJといった標準的な3Dファイル形式で出力でき、CADソフトでの編集や3Dプリンターでの造形にそのまま活用できます。

3Dスキャンの精度はスキャナーの性能によって大きく異なります。建築や自動車など大きな対象物向けのスキャナーでは精度が0.1mm〜1mm程度ですが、ジュエリーのような微細な彫り模様や爪の厚みを正確に記録するには、5ミクロン(0.005mm)クラスの超高精度スキャナーが必要です。

一般的なスキャナーでは、リングの内側の刻印や石座のミル打ち装飾などが潰れてしまい、忠実な復刻が困難です。ジュエリー用途では、スキャナー選びが仕上がりの品質を決定づけるといっても過言ではありません。

Artec Micro IIの特徴

当社が導入しているArtec Micro IIは、小型精密部品のスキャンに特化した産業用3Dスキャナーです。ジュエリーや時計部品、歯科技工物、精密機械部品など、高い精度が求められる分野で世界的に採用されています。

5ミクロン(0.005mm)の超高精度

Artec Micro IIの最大の特徴は、点間距離5ミクロンという圧倒的な精度です。5ミクロンとは0.005mm——人間の髪の毛の太さ(約70ミクロン)の約14分の1にあたります。この精度があれば、ジュエリーの繊細な彫り模様はもちろん、爪の微妙な厚み、石座の曲面形状、テクスチャーの凹凸まで、肉眼では判別しにくいディテールも忠実にデータ化できます。

フルカラー3Dスキャン対応

形状データだけでなく、素材の色や質感もフルカラーで記録できます。ゴールドとシルバーの色味の違い、エナメル加工の色彩、宝石の色合いなど、視覚的な情報もデジタルデータとして保存。EC用の3Dビューアーや、デザイン検討の参考資料として活用できます。

対応サイズと出力形式

スキャン可能なサイズは最大200×200×150mm。リング、ペンダント、ブローチ、イヤリングなど、一般的なジュエリーはほぼすべてカバーできます。出力形式はSTL、OBJなどの業界標準フォーマットに対応しており、各種CADソフトや3Dプリンターとの互換性も万全です。

こんな用途に活用できます

3Dスキャンは「複製を作る」だけの技術ではありません。ジュエリー・貴金属業界を中心に、さまざまな用途で活用されています。

廃盤品の復刻

すでに金型が失われてしまった廃盤ジュエリーも、現物さえあれば3Dスキャンでデータ化し、復刻が可能です。ブランドの過去の名作や、長年愛されたロングセラー商品の再生産にも対応できます。従来はゴム型を取り直す必要がありましたが、3Dデータなら劣化なく永久に保存でき、必要な時にいつでも再生産できます。

大切なジュエリーの複製・サイズ違い制作

結婚指輪のサイズ違い、家族へのプレゼント用の複製、形見のジュエリーの共有など、個人のお客様からのご依頼にも対応しています。3Dデータ上でサイズ変更や微調整が可能なため、単なるコピーではなく、用途に合わせたカスタマイズも行えます。

品質検査・品質管理

スキャンデータとCAD設計データを比較する「偏差分析」を行えば、製品が設計通りに仕上がっているかを数値で確認できます。目視検査では見落としがちな微細な寸法誤差も検出でき、品質管理の精度が飛躍的に向上します。

デザインのアーカイブ・技術継承

長年蓄積された職人の作品やブランドのデザイン資産を、3Dデータとしてデジタルアーカイブ化。物理的な保管では避けられない劣化・紛失のリスクを排除し、貴重なデザイン資産を次世代へ確実に継承できます。

EC用の3Dモデル作成

スキャンしたフルカラー3Dデータを活用し、ECサイト上で商品を360度回転させて閲覧できる3Dビューアーを構築できます。写真だけでは伝わりにくい立体感やディテールをお客様に体感いただくことで、購入率の向上につながります。

3Dスキャンから鋳造までの流れ

当社では、3Dスキャンからキャスト(鋳造)、検品・納品までをワンストップで対応しています。以下が具体的な流れです。

STEP 1|現物品を当社へ発送

復刻・複製したいジュエリーや精密部品を、当社宛てにお送りください。専用の梱包方法をご案内いたしますので、初めての方もご安心ください。宝石付きの製品もそのままお送りいただけます。

STEP 2|Artec Micro IIで3Dスキャン

到着した現物品を、Artec Micro IIで高精度3Dスキャンします。5ミクロンの精度で、表面の微細な凹凸や彫り模様まで忠実にデータ化。非接触スキャンのため、現物品に傷がつく心配は一切ありません。

STEP 3|スキャンデータの確認・修正

取得した3Dデータをエンジニアが確認し、必要に応じてノイズ除去やメッシュの修正を行います。サイズ変更やデザインの微調整が必要な場合も、この段階で対応可能です。修正後のデータはお客様にも共有し、確認いただけます。

STEP 4|MJP 300Wでワックス造形

確定した3Dデータをもとに、高精細3Dプリンター「MJP 300W」でワックス原型を造形します。従来の手作業によるワックス彫刻と比べて、複雑な形状も高い再現性で出力可能です。

STEP 5|鋳造・キャスト生地上がり(2〜3日)

ワックス原型を石膏で埋没し、焼成後に溶融金属を流し込んで鋳造を行います。素材はシルバー、ゴールド、プラチナなど8種類の貴金属に対応。鋳造機7基体制で、素材ごとに最適な条件で鋳造します。キャスト生地は最短2〜3日で仕上がります。

STEP 6|検品・納品(現物品もお返し)

鋳造後の製品を検品し、品質基準をクリアしたもののみ納品いたします。お預かりした現物品は、鋳造品と一緒に丁寧に梱包してお返しします。

よくある質問

Q. 現物品は傷つきませんか?
Artec Micro IIは完全非接触方式のスキャナーです。構造化光(パターン光)を照射してデータを取得するため、現物品に直接触れることは一切ありません。宝石付きのジュエリーやアンティーク品も安心してお預けいただけます。
Q. どのくらいの大きさまでスキャンできますか?
Artec Micro IIの最大スキャンサイズは200×200×150mmです。リング、ペンダント、ブローチ、バングルなど、一般的なジュエリー・アクセサリーはほぼすべて対応可能です。これより大きなものについては別途ご相談ください。
Q. スキャンデータだけの納品は可能ですか?
はい、可能です。STL形式またはOBJ形式で3Dデータのみの納品にも対応しております。鋳造は不要で、データだけを社内のCADや3Dプリンターで活用したいというお客様にもご利用いただけます。
Q. スキャンから納品まで、どのくらいの期間がかかりますか?
スキャンのみの場合は、現物品到着後最短3営業日で納品可能です。スキャン+鋳造の場合は、データ確認・修正を含めて約1〜2週間が目安となります。お急ぎの場合はご相談ください。

参考文献・出典

  1. Artec 3D公式「Artec Micro II 仕様」(https://www.artec3d.com/ja/portable-3d-scanners/artec-micro-ii
  2. 経済産業省「デジタルものづくり推進」(https://www.meti.go.jp/
  3. 一般社団法人3Dデータを活用する会「3Dスキャン技術の基礎」(https://3d-data.or.jp/

※本記事の情報は執筆時点のものです。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。

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