ジュエリー製造の現場は今、大きな転換期を迎えています。3DCADでデザインしたジュエリーデータから、直接鋳造用のワックス原型を出力できる時代になりました。これまでジュエリーの原型は、熟練の職人がワックスを一つひとつ手彫りで仕上げるのが一般的でした。しかし、3D造形WAX技術の登場により、デジタルデータからダイレクトに精密なワックス原型を3Dプリントし、そのまま鋳造工程へ進められるようになっています。

この記事では、3D Systems社製MJP 300Wを使った3D造形WAXの仕組みから、実際にCADデータを鋳造品として手にするまでの全工程を詳しく解説します。デジタルジュエリー製造に興味のある方、3DCADデータを活用した鋳造をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

3D造形WAXとは?

3D造形WAXとは、3DCADで作成したデジタルデータをもとに、鋳造に使用できる100%ワックス素材の精密原型を3Dプリントする技術です。一般的なFDM(熱溶融積層)方式やSLA(光造形)方式の3Dプリンターとは根本的に異なり、ジュエリー鋳造に特化した専用ワックス素材を使用するのが最大の特徴です。

従来の3Dプリント素材(樹脂やレジン)で出力した原型を鋳造に使うと、燃焼時に灰分が残り、鋳造品に欠陥(巣やピンホール)が生じることがありました。しかし、3D造形WAXで使用する素材は100%ワックスのため、焼成時に完全に燃え尽き、灰分がゼロ。従来の手彫りワックス原型と同じ品質でロストワックス法(インベストメントキャスティング)に使用できます。

つまり、3DCADでデザインしたデータを送るだけで、手彫りと同等品質のワックス原型が得られるのです。これにより、デザインの自由度・再現性・生産効率が飛躍的に向上しました。

MJP 300Wの特徴

株式会社ビルドが導入しているMJP 300Wは、3D Systems社が開発したジュエリー鋳造向けの高精度3Dプリンターです。マルチジェットプリンティング(MJP)方式を採用し、業界トップクラスの精度と品質を実現しています。

100%ワックス素材(VisiJet M3 CAST)

MJP 300Wで使用するのは、3D Systems社が開発した専用ワックス素材「VisiJet」シリーズです。この素材は100%ワックスで構成されており、焼成時の灰分(残留物)がゼロ。従来のロストワックス鋳造と同じプロセスで使用でき、欠陥のないクリーンな鋳造品を実現します。新しい素材検証や鋳造条件の変更も不要なため、既存の鋳造ワークフローにそのまま組み込める点も大きなメリットです。

超高解像度による精密造形

MJP 300Wは最高2000×1800 DPIの超高解像度を誇ります。QHDモード(最高精細モード)では最小8.8ミクロンの積層ピッチで造形が可能。これにより、ジュエリーに求められる繊細な曲線、微細な彫刻模様、シャープなエッジなど、手彫り原型に匹敵するディテールを正確に再現できます。パヴェセッティングの石座や、フィリグリー(透かし彫り)のような極めて複雑なデザインにも対応可能です。

ゆとりある造形エリア

造形エリアは294×211×144mm。ジュエリーの原型としては十分な広さがあり、リング・ペンダント・ブローチなど、さまざまなサイズのジュエリー原型に対応します。さらに、造形エリア内に複数のデザインを配置して一度に出力できるため、量産やバリエーション展開の際にも効率的です。たとえば、リングのサイズ違いを一括で出力したり、異なるデザインのペンダントをまとめて造形することが可能です。

溶解性サポート材で後処理が簡単

3Dプリントでは、オーバーハング(宙に浮く形状)を支えるためにサポート材が必要です。MJP 300Wのサポート材は専用の溶解液で溶かして除去できるため、手作業でのサポート除去が不要。複雑な内部構造や中空デザインでも、ワックス原型を傷つけることなくサポートをきれいに取り除くことができます。

こんな方におすすめ

3D造形WAX(MJP 300W)によるデジタルジュエリー製造は、以下のような方に特におすすめです。

3DCADデータから鋳造までの流れ

お客様の3DCADデータが鋳造品として仕上がるまでの具体的な工程をご紹介します。データのご入稿から納品まで、スムーズにご対応いたします。

Step 1|3DCADデータの準備

お使いの3DCADソフト(Rhinoceros、ZBrush、Fusion 360、MatrixGoldなど)でジュエリーをデザインし、STL形式またはOBJ形式でデータを書き出してください。書き出し時は、メッシュ品質を「高」に設定し、ポリゴン数を十分に確保することで、滑らかな曲面が再現されます。壁厚は最低0.5mm以上を推奨しています。

Step 2|データの送付

作成した3DCADデータを、メールまたはファイル転送サービスでお送りください。データ容量が大きい場合は、GigaFile便やfirestorageなどのファイル転送サービスのご利用をおすすめします。ご希望の素材・数量・納期もあわせてお知らせください。

Step 3|データ確認・造形条件の打ち合わせ

お送りいただいたデータを専門スタッフが確認します。壁厚の不足、メッシュエラー、造形上の注意点などがあれば、修正のアドバイスとともにご連絡いたします。造形モード(高速/高精細)やサイズの確認など、最適な造形条件をご提案します。

Step 4|MJP 300Wでワックス造形

打ち合わせ内容に基づき、MJP 300Wで100%ワックス素材の精密原型を造形します。造形後、溶解性サポート材を除去し、必要に応じて表面の仕上げを行います。高精度なワックス原型が完成します。

Step 5|ワックスツリー組み上げ・鋳造

造形されたワックス原型をワックスツリーに組み上げ、石膏で固めた後、高温の炉でワックスを焼き飛ばします。できた空洞にご指定の貴金属を流し込み、鋳造を行います。鋳造工程は通常2〜3日で完了します。当社では鋳造機7基体制で、素材ごとに最適な温度・圧力管理を徹底しています。

Step 6|検品・配送にて納品

鋳造品をツリーから切り離し、検品を行います。品質基準をクリアしたキャスト生地を丁寧に梱包し、配送にて納品いたします。研磨や石留めなどの仕上げ加工が必要な場合は、別途ご相談ください。

対応フォーマットと注意点

3D造形WAXによるワックス出力にあたって、データのフォーマットや作成時の注意点をまとめます。

対応ファイル形式

データ作成時の注意点

データに問題がある場合でも、当社スタッフが修正のアドバイスや簡易的なデータ修正に対応いたしますので、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 3Dプリントしたワックスは、従来の手彫りワックスと鋳造品質は同じですか?

A. はい、同等の品質です。MJP 300Wで使用するVisiJetワックスは100%ワックス素材で、焼成時の灰分がゼロ。従来の手彫りワックスと同じロストワックス鋳造プロセスで使用でき、欠陥のないクリーンな鋳造品が得られます。鋳造条件の変更も不要です。

Q. どのCADソフトに対応していますか?

A. STLまたはOBJ形式で書き出しができるCADソフトであれば、基本的にすべて対応可能です。代表的なソフトとしては、Rhinoceros(ライノセラス)、ZBrush、Fusion 360、MatrixGold、Blender、SolidWorks、FreeCADなどがあります。

Q. 最小の造形精度はどのくらいですか?

A. MJP 300WのQHD(最高精細)モードでは、最小積層ピッチ8.8ミクロンで造形が可能です。2000×1800 DPIの超高解像度と合わせて、ジュエリーに求められる極めて微細なディテールまで正確に再現します。

Q. 1点からでも依頼できますか?

A. はい、1点からお受けしています。試作品1点だけのご依頼から、量産まで柔軟に対応いたします。初めての方もお気軽にご相談ください。

Q. 納期はどのくらいですか?

A. データ確認後、ワックス造形から鋳造完了まで通常5〜7営業日が目安です。ワックス出力のみの場合はさらに短納期で対応可能です。お急ぎの場合はご相談ください。

参考文献・出典

  1. 3D Systems公式「MJP 300W 仕様」(https://www.3dsystems.com/
  2. 3D Systems「VisiJet Wax Jewel Red」材料データ(https://www.3dsystems.com/
  3. 日本3Dプリンティング産業技術協会「3Dプリント技術概要」

※本記事の情報は執筆時点のものです。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。

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